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NECオフコンの歴史


9.もうひとつのオフィスプロセッサシリーズ(1985/10〜1993/6)

9.1 もうひとつのオフィスプロセッサ

ここで、いままで述べたシステム100系とは別のオフィスプロセッサについて説明しなければなりません。このオフィスプロセッサの章の冒頭で記述したように、1985年にオフィスプロセッサとなった機種は、VSシリーズの他にNECシステムN6500シリーズがありました。このN6500シリーズは、もともと汎用コンピュータ(ACOS)の端末装置及び端末制御装置から発展してきた機種です。

一般的に昔の汎用コンピュータの端末は、ただ単に入力されたデータを汎用コンピュータに送って、汎用コンピュータ側から返ってきた結果を表示するだけのものでした。しかしそのうちに単純な(簡単な)処理は、汎用コンピュータ側でやらずに、端末側でやらせればよいということになり、徐々に端末の機能が高度化していきました。

N6500シリーズの最初のモデルであるN6300は、システム100と同じ1973年10月に発表されました。日本初のインテリジェント・ターミナルとして、単なる入出力だけでなく、端末装置自身で必要な処理を行うことができました。

その後1975年11月に、後継モデルのN6300/50が発売されました。このN6300/50は、NTOSというOSが搭載され、端末として使用するだけでなく、独立してデータ処理を行うことができました。このN6300/50は1978年にNEACシステム50という名称を与えられてオフコンとして販売されていたことからわかるように、既にこの頃には単なる端末装置の域を越えてオフコンに近い能力を持っていました。

さらに1979年7月に、改良型のN6300/50Nが発売された後、1982年にN6300/55が発表されました。



9.2 2つのオフィスプロセッサ

システム100/システム3100系のオフコンはもともと中小企業向けのコンピュータから発展したもので、大企業向けの汎用コンピュータの端末から発展したN6500系のコンピュータとは全く別のコンピュータでした。ところが両系統のコンピュータも発展していくにつれオフィス用のコンピュータとして次第に同じような役割を持たされることになります。そうなると同じような役割を持ったコンピュータはまとめて、同じ名称にしたほうが良いということになります。そのため、この2系統のコンピュータ、VSシリーズとシステム6500はオフィスプロセッサとして統一されました。

N6500シリーズのOS、NTOSは、システム100/システム3100系統のOSである、ITOS(A-VX10)とはコマンド体系などが違っていました。内部アーキテクチャも違いました。もともと違うコンピュータなので違うのは当然です。しかし、データ構造やCOBOL言語などは非常に似ていました。システム100/システム3100系は、もとは汎用コンピュータ開発プロジェクトであるNPLプロジェクトの1機種として開発されたものです。そしてシステムN6500はNPLプロジェクトの末に開発された汎用コンピュータの端末としての役割を持っています。両方とも汎用コンピュータとのデータ互換性を重視していたため、データ構造やCOBOL言語などがよく似ていたのです。

名称統一のもうひとつの目的として、統合によるオフコンシェア拡大がありました。1980年代に入ると富士通のオフコンのシェアが急激に延び、富士通、NECの二強時代となっていました。統計を行った組織によって多少の違いがあるものの、1985年、1986年は富士通、NECが同率首位でしたが、1987年には富士通がオフコン市場で首位の座を占めました。その後、NECとしては首位奪取が命題となっていました。

名称が統一していない場合、雑誌や関係機関などのシェア調査で、オフコン(システム100シリーズ)と汎用コンピュータの端末機(N6300シリーズ)として別々に扱われるため、オフコン市場のシェアで不利になってしまいます。そしてN6300/N6500はもはや端末機としての役割を超えて、オフコンとしての機能を十分持っていました。つまり両者をオフコン(オフィスプロセッサ)という1つの枠組に入れることにより、一気にNECのオフコンのシェアを拡大し首位を奪還しようとしたのです。



9.3 オフィスプロセッサのモデル名称統一

1987年5月にNECシステム3100シリーズが発表された時、N6500シリーズもシステム3050シリーズとなりました。この時は、システム名称こそオフィスプロセッサと統一されましたが、モデル名称はシステム3100、システム3050と統一はされませんでした。どうもシステム3050の開発チームが、「昔NECのミニコンに3100という番号があったので紛らわしい。」と反対したようです。事務処理中心のオフコンの世界に閉じていたシステム100とは違い、事務処理も科学計算も行う汎用コンピュータの世界にいたシステムN6500の開発チームは、ある程度ミニコンも意識する必要があったのかもしれません。

しかし、販売側の強い要請により、1990年5月末にはシステム3050もシステム3100シリーズSモデルと名称が変更になりました。こうして、オフィスプロセッサはシステム3100シリーズとしてモデル名称が統一され、Aモデル、Sモデル、Xモデルという3種類に分類されることになりました。Aモデルが従来のシステム100/システム3100系統のIDPプロセッサのモデル、Sモデルが従来のN6500/システム3050系統のモデル、Xモデルがクライアント用のモデル(スタンドアロンとして使用できるものもある。)です。
SモデルのOSもNTOSから機能強化されA-VX5と名称が変更になりました。もちろんA-VX5はNTOSと上位互換になっており、そういう点では、A-VX10とITOSの関係と同じです。

こうしてシステム名称の統一、モデル名称の統一が成されましたが、単に名前を統一しただけでは何の意味もありません。前述したように2つのオフィスプロセッサのアーキテクチャは異なっており、これを1つに統合しなければなりません。その第1歩として、1991年にシステム3100/Sモデル系の独自機能をシステム3100/Aモデル系のサーバ機構という機能として組み込みました。
システム3100/Aモデルはスタンドアロンのオフコンが起源であるため、他の会社のオフコンと比較するとネットワーク機能が弱く、そこが弱点となっていました。一方、システム3100/Sモデルは汎用コンピュータのフロントエンドとしての役割を持っていたため、豊富なネットワーク接続機能とPC管理機能を持っていました。これをシステム3100/Aモデルに吸収することが目的でした。



9.4 UNIXベースのオフィスプロセッサ

この頃UNIXベースのコンピュータが評判になりました。このためNECは、システム3100/Aモデルとシステム3100/Sモデルの2つのオフィスプロセッサを統合し、新たにUNIXベースのオフィスプロセッサをラインナップに加えるという戦術を採用しました。これがUNIX系(OP-UX/VというSVR 3.xベースのOS)やNetWareのOSが搭載できるオフィスプロセッサ、OP-Xというモデルです。

1992年8月にOP-X/Uモデルが発表されました。CPUにはインテル社のi486DXが使用されており、UNIXとNetWareがOSとして選択可能でした。

システム3100/Sモデルはシステム3100/Aモデルに統合する方針になりましたが、SモデルとAモデルではコマンド体系が異なっていたため、今までSモデルを使っていたユーザがすぐにAモデルに移れるはずもなく、システム3100/Sモデルの後継モデルが必要でした。このため1992年10月にOP-X/Rシリーズを発表、このRシリーズにはA-VX5サーバ拡張機構というハードウェアが付加され、Sモデル系統のOS、A-VX5も搭載できるようになっていました。これでSモデルユーザは、従来OSのA-VX5とオープンOSのUNIXの両方を使用できるOP-Xを経由して、Aモデル又はUNIXサーバのいずれかに移行するパスが用意されたことになります。

N6500から始まり、N6300、S3050、S3100/Sモデルと続いたこのシリーズは、OP-Xが最後のモデルとなりました。

当時NECでは複数のUNIXベースのコンピュータシリーズがありました。このために整理の対象となってしまったのか、UNIXベースのオフィスプロセッサもOP-Xが最後となり、NECが別に販売しているUNIXコンピュータEWSシリーズに統合されました。

こうして1987年から約10年を費やしてようやくNECはオフィスプロセッサの統合に成功しました。






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汎用機側は大抵他にもいろいろ計算していてなかなか時間が空かないし、ちょっとした計算にいちいち課金されるのではたまらない。汎用機も限界があるからちょっとした作業もいちいち汎用機側に送っていたらパンクしてしまう。それなら汎用機に送らずに、端末側で計算してしまえば早いでしょうということ。
詳細は「5.漢字オフコンとパソコンと32ビットオフコン(1978〜1985/10)」の章を参照。
いわゆるクラスタ端末。Nは日本語対応を表す。NECの汎用コンピュータACOSの端末を制御する用途としての他にIBMの汎用コンピュータの端末制御用としても非常にたくさん売れた。自身が汎用コンピュータの端末にもなる。
N6300/55の開発コード名は「コロンブス」。制御装置は最大120MByteのディスク容量、最大16台のステーションの制御が可能。制御装置とワークステーションはともにインテルの8086プロセッサを使用。コード体系はEBCDIC。前世代機のN6300/50NにOA機能が強化されている。

このN6300/55のいわば弟分として発売されたものが、ビジネスパソコンN5200/05。N5200のOSはNTOSとほぼ同じアーキテクチャのPTOSというものを搭載していた。
このN5200シリーズを原型として作られたものが、オフコン用の端末(ワークステーション)として作られたシステム8。このシステム8やその後継のシステム8VSII、S3100/10〜S7100/10などには、端末としての機能の他にITOS(後のA-VX10EX)やLAN/OS(後のOAOS、A-VX10EX)というOSを搭載して、スタンドアロンとして使用することもできた。このうちLAN/OSはPTOSを元にして作られたOS。N6300/50シリーズとN5200シリーズ、システム8系オフコンの3機種は、共にCPUがインテル社製(8086など)であり、OSのアーキテクチャもほぼ同じと実によく似ています。またこれらは、もともとのN6300が端末から発展したものであったので、汎用機やシステム100/システム3100系オフコンの端末としてよく使用されました。