ユーティリティ その1
- 1 A−VXのユーティリティ
-
システムを運用していくためには、ハードディスクや磁気テープの管理やデータファイルの管理を行う必要があります。また業務を行う上でよく使用される処理が、あらかじめシステムに備わっていれば便利です。
A−VXには、これらシステムを運用していく上で必要な機能がユーティリティとして用意されています。例えば、ディスクを初期化(フォーマット)する、ファイルを作ったり削除したりする、ファイルの一覧を表示、データーベースを作ったり、データのバックアップや復帰、オペレータやファイル、LMに対する権限の付与/削除、外字の登録、テキストエディタ、プリンタスプール、データのソートやマージ、といった機能を持つ多くのユーティリティがあります。
これらのユーティリティは、RUNコマンド入力行から直接実行したり、メニュー画面から選択して実行できます。またジョブストリームに組み込むこともできます。
ユーティリティの実体はロードモジュールです。
- 2 新システム体系と旧システム体系
-
A−VXのユーティリティには、新システム体系と旧システム体系の2つのインターフェースがあります。
新システム体系ユーティリティは、かつてDISAという概念でコンピュータのインタフェースを統一しようとしたときのもので、独特のメニュー形式に特徴があります。新システム体系の方が新しいだけあって、機能が追加されているもののありますが、片や旧にしかない機能もあったりして、一概に新システム体系ユーティリティが良くて、旧システム体系ユーティリティが良くないというわけではありません。一般的には、旧も新も両方とも使います。
新システム体系ユーティリティでも簡単なパラメータを作ることができますが、本格的にジョブストリーム(バッチ)を作ろうとすると旧システム体系ユーティリティを使用することになります。
Windowsで例えると、新システム体系ユーティリティはウインドウを使って操作するユーティリティソフト、旧システム体系ユーティリティはコマンドプロンプトからコマンド入力していくユーティリティソフトに相当します。
新システム体系ユーティリティは前に説明済みなので、ここでは旧システム体系ユーティリティを紹介したいと思います。旧システム体系ユーティリティは、普通にユーティリティともいうので、以降は特に区別しない場合はユーティリティで話を進めます。
- 3 ユーティリティ
-
(旧システム体系)ユーティリティは新システム体系ユーティリティのシステムメニューのように統一した入口はありません。このため基本的にRUNコマンド入力行にコマンドを入力して実行することになります。
パラメータの入力で画面と対話しながら行うのが、A−VXのユーティリティの特徴です。
ユーティリティは、入力方法の違いでいくつかのグループに分かれます。
- 3.1 順番に質問してくるパラメータ毎に答えていく方式
-
ユーティリティの例1:#LBM
この方式のユーティリティは、一番左から『英文でパラメータの説明、3文字のパラメータのラベル、入力域』の順番になっています。
パラメータラベルは、ジョブストリームなどでも使われ、どのパラメータの値なのかを判別するために使われます。プリンタはPRD、入力側の装置名はIDEというように、ユーティリティ共通である程度決まっており、慣れてくると説明が無くても、このラベルを見ればだいたいどのような目的のパラメータなのかがわかるようになっています。ほとんどのユーティリティはこのタイプです。A−VXがITOSと呼ばれていた初期のころからあるユーティリティです。
- 3.2 メニューで操作・作業を指示していく方式
-
ユーティリティの例2:#ABC
数字キーやPFキーで指示をしていくタイプのユーティリティです。
#ABCや(新しいタイプの)#DDMがこれにあたります。
A−VXがITOS−VXからA−VX10と呼ばれていた1980年代後期から1990年頃に新規に作られたユーティリティがこのタイプのことが多いです。 - 3.3 新HIに準じた形で指示していく方式
-
ユーティリティの例3:#NFCNV
新HIに沿ったインターフェースになっているユーティリティです。
新システム体系ユーティリティの一部の可能性がありますが、システムメニューの項目には入っていないため、こちらに入れました。
新HI以降に新規に作られており、システムメニューの項目に入っていないユーティリティです。
- 3 バッチにユーティリティを使う場合
-
ジョブストリーム(JS)やパラメータセット(PS)でユーティリティを使用することによって、バッチ処理を行うことができます。
ジョブストリームの例
******* FD FORMAT ***************** // フロッピーディスクを初期化して、; // MSD002のTESTDATAをコピーするジョブです。; // フロッピーディスクを装置に入れてください。; /PAUSE 準備ができたら「CTRL」と「F5」を押してください。; /RUN #VOLPR; ACT=PREPARE_NOV=01_VOL=ABCDEF_DEV=FDU000_NAM=_ SSZ=256_FIL=NON_CMP=NO_PRD=NO_ ACT=END_ /> ;
旧システム体系ユーティリティの方にも、#ABCや#SORTなどのように「パラメータ登録」機能や「セーブパラメータ」機能を使って、PSを簡単に作る機能を持っているものもあります。
- 4 ユーティリティのロードモジュールライブラリ
-
ユーティリティはロードモジュールです。SYS@LMLやSYS@LBMといったシステムのロードモジュールライブラリに入っています。通常使うのはSYS@LMLの方です。
A−VXでは(ジョブ起動ファイルの選定方法を参照)、DEV指定やFIL指定がない場合はSRV上のSYS@LMLを自動的に探すため(要するにWindowsなどで言うところのパスが通っているため)、ユーティリティを実行するときにはDEVやFILを指定する必要はありません。
* ユーティリティを実行するときはDEVやFILは指定しない /RUN #ABC; /> ; * でもDEVやFILを指定することもできる /RUN #ABC,DEV=MSD000,FIL=SYS@LML; /> ;
SYS@LMLとSYS@LBMの違いですが、SYS@LMLはA−VX OS自体の保守時などに使用します。例えば、SYS@LMLが壊れたとかSYS@LML内のユーティリティにバグがあったので入れ替えたいといったようなSYS@LMLをメンテするときには、SYS@LML内のユーティリティは使用できません。そのときはSYS@LBM内のユーティリティを使用します。その他にA−VXを保守モードで起動したときなどにもSYS@LBM内のユーティリティを使用します。(A−VXの保守モードは、Windowsのセーフモードのようなものです。A−VXが動作する最小限の状態で起動します。)
- 5 ユーティリティの名前
-
ユーティリティのロードモジュール名は基本的に「#ABC」「#BKUP」「#TEDIT」「#COPY」のように最初に「#」が付きます。
「#ABC」のことはNECの人は「イゲタ エービーシー」とか「シャープ エービーシー」とか読んでいるみたいです。「#」以外にも「$」や「&」など記号が頭に付くロードモジュール名は、システム用のロードモジュールの場合が多いので、COBOLで作ったロードモジュールの名前では避けた方が無難です。
- 6 集積名
-
ファイル名やライブラリファイルのメンバ名に対して、Windowsのワイルドカード文字(*、?)に似た機能を持つ文字があります。
集積名です。ライブラリファイルによって原始プログラム集積名とかメンバ集積名という名称になっていることもあります。
「!」がそれです。例えば、「!」とすると「ライブラリファイル内の全部のメンバ」や「ボリューム内の全ファイル」となります。具体的に書くと、’!”までの文字列が同一のメンバ名のメンバを処理する、となります。
例えば、ライブラリ保守ユーティリティ(#LBM)で、メンバ名を指定するところで「ABC!」と書くと、先頭3文字がABCで始まるすべてのメンバ名のメンバを処理します。例えば、「AAAAA」「ABCDEF」「ABGH」「ABCDZZ」「AB」「ABC」の6つのメンバがあって、メンバ名を「ABC!」にして複写(コピー)コマンドを実行すると、「ABCDEF」ABCDZZ」「ABC」の3つのメンバが複写されます。
メンバ名を「!」にして複写コマンドを実行すると、すべてのメンバ、つまり「AAAAA」「ABCDEF」「ABGH」「ABCDZZ」「AB」「ABC」の6つのメンバを複写します。あくまでも先頭から「!」までなので、「!ABC」とか「A!!BC」のようなパターンはできません。
よく使うのは「!」で、ライブラリファイル内の全部のメンバを複写(コピー)したり、全部のメンバを削除したり、全部のメンバの内容を紙に印刷したり・・・するときに使用します。
どのユーティリティでも使えるわけではなく、#BEDIT、#LBM、#VOLSR、#ABCなどのユーティリティで使用できます。
- 7 従来形式ファイル/大容量形式ファイル
-
ファイルのところでも説明しましたが、A−VXは長い歴史があるため、何度も機能拡張が繰り返されており、従来形式ファイルと大容量形式ファイルという2種類の形式のファイルがあります。(他に拡張形式ファイルというものがありますが、これは特殊なため、今回の説明から割愛します。)
大容量形式ファイルの方が新しいです。名前のとおり、従来形式ファイルと比べて大容量のサイズのファイルを作ることができます。また機能も強化されています。
普段はこの2つのファイルを意識する必要はありません。従来形式ファイルから大容量形式ファイルへコピーしたりもできるし、プログラムでもどの形式のファイルかなど意識する必要もありません。
ただ1点だけ注意しなければならないことがあります。
ファイルに関するユーティリティには、従来互換として従来形式ファイルを扱うユーティリティ群と大容量形式ファイルを扱うユーティリティ群があります。
ファイルのエクステントの追加/拡張、縮小といったファイルのエクステントを扱う処理や属性変更などは、従来形式ファイルには従来形式ファイルを扱うユーティリティ、大容量形式ファイルには大容量形式ファイルを扱うユーティリティで行わなければなりません。
複数索引順編成ファイルは、データファイルと1つ以上のキーファイルから構成されています。これらデータファイルとキーファイルのセットはどちらかの形式のファイルで統一されていなければなりません。従来形式ファイルと大容量形式ファイルの混在はできません。
最近の説明書は、新システム体系で入力する場合を中心で書かれています。
しかし新システム体系も、パラメータ入力部分だけ新しくなっているものの、一旦実行の段階になると旧システム体系のユーティリティが起動されるということがほとんどです。