NECオフコンの歴史
15.Intel CPUのExpressサーバ・その3(2009/11〜?)
- 15.1 Express5800/V600-LHシリーズ
-
2009年11月にオフコンラインナップが一新されExpress5800/V600-LHシリーズが発売されました。従来の多くあったモデルを6種類に集約整理し、それぞれのモデル毎に基準となるシステム構成を提示してわかりやすいシリーズ構成に変更しました。
オフコンOSは新たにA-VX02となり、Windows側も最新のWindowsServer2008Standardが搭載されました。A-VX02の最初のバージョンであるA-VX02 R1.0はサーバ立ち上げ時の起動状況表示がGUI化され、全体的に高速化されるなど、久しぶりにオフコンOSに大きな改良が入ったことを感じさせました。
一方で、A-VX02では従来のバックアップ装置が使えなくなるという問題が新たに発生しました。A-VX02でサポートしているバックアップ装置がハードディスクのみとなったのです。このため、新しいシステムに移行すると以前バックアップしておいたデータが使用できない、テープ系のバックアップ装置にバックアップするためには一旦ハードディスク上にデータをバックアップして、Windows側のバックアップソフトで改めてバックアップ装置にバックアップするというような二度手間がかかるようになりました。
その他いくつもの装置がExpress5800/V600-LHから未サポートとなっています。
2010年11月にExpress5800/V600-LHシリーズの新モデルとA-VX02 R2.0が発売されました。
このモデル以降、特殊なWindowsが搭載されることになります。WindowsServer2008forEmbeddedSystemというもので、通常は組み込みシステム用のOSで、PCサーバなどには使われないものです。
一応普通のWindowsと同じで、Windows上で動くアプリケーションは問題なく動くようですが、特殊なWindowsだけにサポート対象外というソフトウェア製品も多く、なぜこのWindowsエディションを選択したのか理解に苦しむところです。A-VX02 R2.0では、A-VXメニューというA-VX上のソフトとWindows上のソフトをまとめて管理できるメニューが用意され、さらにA-VX02独自のセキュリティ機能であるOCFが大幅強化されました。
別売りの製品では、RDB表数拡張キットやA-VX仮想FDドライブ(VFDD)というものも新たに発売されています。2012年1月発売の新モデルには、A-VX02 R3.0が搭載されていました。R3.0はA-VXシステム利用制限機能と呼ばれる内部統制向け機能が追加されました。ユーザ毎にログオン、コマンド、システムコマンドの実行可能な範囲を細かく制御できる機能です。その他、#ABCや#NFCNVなどのユーティリティにもきめ細かい改良が施され、今まで使い難いと言われていた部分が改善されています。
2012年11月にはExpress5800/V600-LHシリーズの新モデルとA-VX02 R3.5が発売されました。
これはPCサーバExpress5800/100シリーズの新モデル発売に合わせたもので、100シリーズと同様にDDR3-1600対応の新規メモリ/デュアルコアIOプロセッサを採用した次世代RAIDコントローラ/冗長電源/EXPRESSSCOPEエンジン3搭載といった特徴を持っています。 - 15.2 NECのオフコン事業の終焉と最後のオフコン
-
2012年1月にNECでは一万人の従業員のリストラが発表されました。NECの各事業に対しても事業仕分けが行われ、その結果2013年12月20日に重大な発表が行われました。その内容は、2015年1月30日にオフコンの販売を終了し、2020年3月末日をもって保守も終了するというものでした。オフコン事業はリストラ対象となったのです。
そしてオフコン最後のモデルが2014年2月に発売されました。
このモデルは基本的には最新のCPUを搭載、エントリモデルにスリム筺体が採用されるといった、同時期に発売されたPCサーバのExpress5800/100シリーズと共通のアピールポイントを持っています。
搭載されているオフコンOSはA-VX02 R3.6で、大きな機能強化は見られませんでした。この最終モデルは、NECに1つの誤算をもたらしました。想定以上に売れたらしく、生産が間に合わずに納期に間に合わない事態となったのです。そのため、後に最終保守期限が2020年6月末日に延ばされています。
いずれにしてもNECのオフコンは2015年度中で完全に終了したものと思われていました。 - 15.3 2つの"実行環境”
-
NECのオフコン事業は終わっても世間には多くのオフコンが残っているわけで、それらのオフコンをWindowsなどのサーバへ移行するパスをNECはいくつか用意しました。
その中に2つの”実行環境”と呼ばれるソフトウェア基盤があります。この2つはよく似た名前ですが、中身は全く異なるものです。ひとつは「COBOL アプリケーション実行環境」(略して「AP実行環境」と呼ばれる)と呼ばれるもので、これは単にNECのWindows用のCOBOLであるCOBOL StandardEdition用の実行基盤です。
もうひとつが「A-VX実行環境」と呼ばれるものです。
このA-VX実行環境の方ですが、実はExpress5800/600シリーズに今まで搭載されていたオフコンOSのA-VX02そのものです。 - 15.43 A-VX実行環境
-
今までのExpress5800/600シリーズというハードウェアとセットになっていたオフコンOS(A-VX02)をハードウェアから切り離し、通常のPCサーバ上でも動作するようにしたものがA-VX実行環境です。
従来A-VX02上で動作していたアプリケーションは全くそのまま(変換せずに)実行でき、当然#ABC、#SORT、#BKUP、#NFCNVといったユーティリティも使えます。SMARTやRDB/EUFといったものもそのまま使えます。データベースもA-VX RDBが使えるし、ファイル形式もそのままです。つまりまるっきりA-VX02そのものなのです。
但し制限もあります。Express5800/600シリーズというハードウェアから切り離されたため、幾つかのA-VX02の標準的な機能が使えなくなっています。当然ながらオフコン固有のハードウェア装置やパッケージ/ボードのうち、PCサーバにつなげないもの(意外と多い)は使えなくなっています。
一方でPCサーバで動くようになったことによる利点もあります。NECはWindows上で動くIFASPRO RDBと呼ばれる独自データベースを持っています。A-VX実行環境は、A-VX RDBとIFASPRO RDBという2つの(NEC独自の)データベースを使用できるようになっています。オフコンの最終モデルが発売されてからわずか3ヶ月後の2014年5月にA-VX実行環境 R1.0が発表、発売されました。
またこのA-VX実行環境は、発売時の2014年5月時点で最低限2023年1月10日まではサポートすることが明言されています。
WindowsServer2012上やHyper-V、VMwareのような仮想環境上でも動作するようになっています。
A-VX実行環境では接続端末台数別に5種類のエディションを用意して、小規模から大規模までのシステムに対応できるようになっています。
大きな特徴としては、A-VX実行環境はライセンス製品となっており、1年毎にライセンスを更新する形となっていることです。
前へ 戻る 次へ