複数索引順編成ファイル その１
- １ 複数索引順編成ファイルとはどんなファイルか
-
索引順編成ファイルが１つのキーしか扱えないのに対して、複数索引順編成ファイルは最大８個までのキーを扱える多重索引ファイルになります。
他の編成ファイルが１個のファイルから構成されているのに対して、複数索引順編成ファイルはデータファイルとキーの種類分のキーファイルから構成されています。
データファイルの構造はほぼ相対編成ファイルと同じ形、キーファイルはほぼ索引順編成ファイルの索引部と同じ構成(Ｂ＋ツリー構造)になっています。 二重キーというものもあります。
データが格納されていく順番は、順編成ファイルと同様に入力順にレコードに書き込まれていきます。
キーが１個の場合は索引順編成とほぼ同じになりますが、索引順編成ファイルが１個のファイルの中にキー領域とデータ領域が作られるのに対して、複数索引順編成ファイルはキーファイルとデータファイルの２個のファイルになるのが異なります。また索引順編成ファイルは最大でも1,048,575セクタのサイズまでしか作ることができませんが、複数索引順編成ファイルはその４倍のサイズの大きさのファイルを作ることができます。
複数索引順編成ファイルは、リレーショナル型データベースのファイルとしてそのまま利用することができます。
この複数索引順編成ファイルは、他のファイル編成と比べて比較的あとに出来た種類のファイルです。このため他のオフコンメーカーにも同様のファイル編成がありますが、名称が若干異なっていたり、仕様（使えるキーの数など）が異なっていたりします。
実際に複数索引順編成ファイルを見てみましょう。データファイルがTEST01、キーファイルは１個のパターンでキーファイルがTEST01KEY1です。キーファイルは８個まで作れますが、キーが１個の複数索引順編成ファイルもありです。データファイルもキーファイルもファイル名は自由に決められますが、ある程度関係があるということがわかるような名前にした方がよいです。
簡易操作ユーティリティ（#ABC）でファイルの一覧を表示したところです。データファイル：TEST01はタイプがMIX（＝複数索引順編成ファイルを構成するファイルの意味）、ORGはREL（＝相対編成ファイルの意味）、ハードディスクの16592セクタから17591セクタにかけて1000セクタのファイルサイズで確保されています。
キーファイル：TEST01KEY1はタイプがMIX、ORGはIS（＝索引順編成ファイルの意味）、ハードディスクの17600セクタから18299セクタにかけて700セクタのファイルサイズで確保されています。
6行目に「TEST01 IO ( TEST01KEY1 )」となっているので、TEST01KEY1はTEST01のキーファイルであることがわかります。
次にメインフレーム系の人へ説明しておきますが、キーファイルはメインフレーム系の二次索引ファイルと役割的には似ていますが、メインフレーム系と異なるのは一次キーも二次キーもキーファイルになっていることです。
- ３ レコードキーの属性
-
レコードキーには次のような属性を持つことができます。
名 称 概 要 二重キー 二重キーありの場合はレコードキーに同じ値を持つことを許す。同一レコードキーともいう
ただし主レコードキーは二重キーありにはできない既に登録済みのレコードと同一のキー値を持つレコードをさらに追加できるかどうかを指定できます。同一のキー値を許す場合「二重キーあり」でファイルを作ります。同一のキー値を許さない場合は「二重キーなし」でファイルを作ります。 ファイルを作った後に「あり」を「なし」にしたり、逆に「なし」から「あり」に変更することはできません。
- ３ ファイルの処理モード
-
複数索引順編成ファイルの処理モードは、索引順編成ファイルと同じで３種類です。
＜入力処理モード＞
レコードを読み込むモード。ファイルに対する書き込みは一切できない。
＜出力処理モード＞
入力処理モードとは逆に、ファイル先頭からレコードを順番に書き込むモード。前に書いたレコード（データ）は上書きされて残らない。ファイルからの読み込みは一切できない。
＜更新処理モード＞
レコードの書き込みや読み込み、レコードの内容を置換したり、レコードの追加や削除をすることができる。
- ４ ファイルのアクセスモード
-
複数索引順編成ファイルは順アクセスモード、乱アクセスモード、動的アクセスモードという３種類のアクセスモードを持ちます。
アクセスモード 概 要 順アクセス レコードキーの順番にアクセスする。同一キーのレコードがある場合は、レコードの発生順にアクセスする。 乱アクセス レコードキーを指定してレコードを直接読み込むことができる。 動的アクセス 特定のレコードを乱アクセスで読み込み、その後連続するレコードを順次的に読み込む。 - ５ レコードの読み込み
-
レコードを読み込む方法は、順読み取りと乱読み取りの２種類あります。
＜順読み取り＞
順アクセスモードと動的アクセスモードでは、レコードを論理順に読むことができます。論理順とは、キーファイルのキーの順番ということです。＜乱読み取り＞
乱アクセスモードと動的アクセスモードでは、指定したキーを持つレコードを読み取ることができます。次のような複数索引順編成ファイルがあるとします。（キーファイルの構造は説明の為にかなり簡略化されています。）
キーファイルは、レコードキーとポインタで構成されています。ポインタはそのキーに対応するデータファイルのレコードを指しています。例えばキーファイル１の最初のレコードは、キーが「077」のレコード（データ）が「２番目のレコード」であることを示しています
キーファイル１を使って順読み取りをすると、データファイルの「２番目のレコード」→「４番目のレコード」→「１番目のレコード」→「３番目のレコード」の順番で読み込まれます。
キーファイル１を使って乱読み取りする場合は、キーに090を指定してレコードの読み込みを行うと「４番目のレコード」を読み込みます。
- ６ レコードの追加
-
レコード（データ）の追加を行うと、レコードの発生順にデータファイル領域の先頭から順次格納していきます。そしてキーファイルに追加したレコードのキー情報が格納されます。
まず、話を単純にするために、データファイルと１つのキーファイルの場合のレコードの追加を考えてみます。今、１つのレコード（データ）を追加するとします。
まず、データファイルにレコード（データ）を追加します。このときは以前にレコードを格納した場所の次の領域（ＥＯＤが指す場所）にレコードが追加されます。（ＥＯＤが指す場所が今追加したレコードの次に移動します。）
次にキーファイルに今追加したレコード（データ）へのポインタ追加します。キーファイルは最初に述べたように索引順編成ファイルの索引部と同じような構造になっています。キーは昇順に索引ブロック単位に整列して格納されます。（図では説明上キーファイルは簡易的に書いています。）
キーファイルは、キーからデータの入っている場所がわかるように、キーとレコード（データ）へのポインタが対になって格納されています。
データファイルは相対編成ファイルなので、ポインタには実際には相対レコード番号が入っています。
キーのポインタ部分に今追加したレコードの相対レコード番号を入れて、レコードの追加が終了します。
次に複数のキーファイルがある場合を考えてみます。
あるキーファイルを経由してデータを追加したり削除した場合、他のキーファイル内の情報は更新されません。
例えばあるキーを使ってデータを追加したとします。この後別のキーを使って追加したデータを検索しても、見つからないということです。このように複数のキーファイルの情報を常にデータファイルと一致させるために、定期的に「ファイルの再編成」という作業が必要となります。この再編成によって、すべてのキーファイルの情報が更新されて、キーファイルとデータファイルの矛盾を解消します。
��のようにキーファイルとデータファイルの更新状態の同期が合わなくなっているときに、ファイルのオープンをすると「ファイルの更新番号が不一致」というメッセージが表示されます。（上の図はわかりやすいようにデータファイルもキーも上から順番に入るような図になっていますが、実際は異なりキーファイルは索引ブロック内に入ります。）
データファイル内のデータを追加したり削除したりするのは、当然キー経由でも行えますが、複数索引”順編成”ファイルというぐらいなので、裏技的に順編成ファイル的に追加／削除を行うこともできます。
この場合はキーファイルを経由しないのため、データファイルの内容とキーファイルの内容が不一致となってしまいます。（つまり順編成ファイル的にデータを追加した情報がキーファイル内に入っていない）この場合も「ファイルの再編成」という作業が必要となります。 - ７ レコードの更新
-
更新処理モードを使用することによって、レコードの内容を変更することができます。
レコードの更新はあらかじめレコードを読み込み、内容を変更したレコードを書き戻すことによって行います。レコード読み込まずにレコードの内容を変更することはできません。
レコードの読み込みからレコードの書き戻しの間はレコードの排他制御が働きます。
- ８ レコード（データ）の削除
-
レコードを削除すると、次のように処理されます。
＜データファイル＞
レコードの先頭に削除コードが書き込まれ、削除レコードとなります。
＜キーファイル＞
キー情報は削除され、キーファイルは再編成される。
索引順編成ファイルと異なり、削除レコードは自動では再利用されません。（順編成ファイルや相対編成ファイルと同じ。）つまりデータの追加削除を繰り返していくと、使用可能なレコードが減っていき、そのうちにファイルがオーバーフローになるということになります。
このような場合は単に削除レコードが増えているだけなので、ファイルの再編成を行って、削除レコードを未使用状態のレコードに戻せば、オーバーフローという問題を解決することができます。
順編成ファイルのようにいったん削除したレコード（データ）を復活させるのは非常に難しいです。キー経由でのデータの直接参照はできませんが、＃ＡＢＣなどのユーティリティでデータファイルを直接アクセスすることによって、削除レコードの読み込みは可能です。＃ＡＢＣのファイル変換で削除レコードのパラメータをYESにします。
- ９ 複数索引順編成ファイルのオーバーフロー
-
複数索引順編成ファイルのオーバーフローの原因はいくつかの種類があります。
・データファイルがオーバーフローした
データファイルがオーバーフローするのは、削除レコードがたくさんできてしまい単に使用できるレコードが無くなってしまっただけのものと、ファイルの全レコードが使用されて本当にオーバーフローしている場合とがあります。
削除レコードをまた使用できるようにするには上に書いたようにファイルの再編成を行います。 本当にオーバーフローしているならば、エクステントの拡張／追加を行ってファイルサイズを拡大します。
・キーファイルがオーバーフローした
キーファイルはエクステントの拡張／追加は行うことができません。一旦オーバーフローしたキーファイルを削除して、同名のもっと大きなキーファイル（ファイルサイズ以外は以前と全く同じ属性のファイル）をアロケートしてからファイルの再編成を行います。
- １０ キーファイルの同時更新機能
-
レコードの追加のところで説明した通り、データの追加、削除を行うと、その処理を実施したキーファイルのみしか結果が反映されず、他のキーファイルに関してはキーファイルとデータファイルの間に矛盾が生じます。通常はその解決の為、ユーティリティを使用して「ファイルの再編成」を行います。
これだと困る場合もあるので、あるキーファイルを経由してデータを追加したり削除したりしたときに、他のキーファイルも同時に更新する機能もあります。これがキーファイルの同時更新機能です。
この機能を利用するには、複数索引順編成ファイルのアロケート時にキーファイルに対して同時更新を指定し、プログラムでも同時更新を指定します。
あるキーファイルから追加、更新、削除が実行された場合、その複数索引順編成ファイルに属するキーファイルのうちで同時更新の指定のあるキーファイルだけ同時更新を行います。
ただしこの機能を利用するといくつものファイルを更新することになるため、データの更新時に更新処理が遅くなります。
このため、キーファイルの同時更新機能を使用するかどうか、判断が必要になります。
例えばキーファイルが８個あったとしても、常にすべてのキーファイルを使わない場合も多いと思います。例えば毎日使うプログラムで使用するキーファイルは１つだけで、他のキーファイルを使うのは月末処理だけ、ということもあると思います。そのような場合は同時更新機能は必要ありません。月末処理の直前に「ファイルの再編成」を行って、他のキーファイルを最新の状態にすればいいのです。
毎日使うキーファイルがいくつかあるのならば、毎日使うキーファイルだけ同時更新機能を利用して、他のキーは月末処理の直前に「ファイルの再編成」を行って最新の状態にすればいいのです。たとえ「毎日使います」でも、そのプログラムが数時間に１回実行される程度なら、もしかしたらそのたびに「ファイルの再編成」を行った方が速いかもしれません。、 - １１ ファイル再編成
-
複数索引順編成ファイルの場合は、データファイルと共に複数のキーファイルも同時に再編成する必要があり複雑なため、ファイルの再編成を行うための機能がシステムユーティリティの中に用意されています。（順編成ファイルや相対編成ファイルは簡単にファイル再編成可能なので用意されていない。）
ファイル再編成が必要な理由はいくつかあり、１つはレコードの削除で説明した通り削除したレコードを使用可能にするため、もう一つはレコードの追加で説明した通りデータファイルとキーファイルの不一致を解消する為です。
このため、複数索引順編成ファイルは定期的に夜間バッチ等でファイル再編成を行う運用にしているところが多いようです。ファイル再編成を行う頻度は、目的によって異なりますが、キーファイルの同時更新機能を使用しているのでオーバーフロー対策が主という場合はそれほど頻繁でなくてもよいはずです。一方キーファイルを一致させるために再編成を行うのならば、その目的のキーファイルを使う直前に再編成を行うのがよいです。キーファイルを使わないのに頻繁に再編成しても無駄です。
一般的にファイルの再編成には、システムメニュー画面から「データ操作支援−Ｈ／再編成」か＃ＡＢＣというユーティリティを使用します。古いユーティリティである＃ＭＩＸＧＮというものも使用できますが、これは＃ＡＬＬＯＣというやはり古いタイプのユーティリティで作られた従来形式の複数索引順編成ファイルの場合のみにした方がよいそうです。
ファイルの再編成を行うと、データファイル内の削除したレコードが再度使用できるようになり、キーファイルの情報が更新されてデータファイルとキーファイルの情報が一致します。
- １２ ファイルの削除
-
複数索引順編成ファイルを削除する場合は、順番があります。まずキーファイルを削除していき、最後にデータファイルを削除します。
- １３ ファイル／ブロック形式
-
レコードの桁数は、５〜４０９６
ブロック化係数は、１〜２５６
ブロックの桁数は、５〜４０９６
索引キー長の桁数は、１〜２４３
索引キーはレコード内に複数個存在してもよいが、１つのキーは連続した領域に存在しなければなりません。
キーの数は最大８個。有効な値は、先頭が１６進数ＦＦ以外の文字列
- １４ オルタネートキーアクセス
-
複数索引順編成ファイルをＣＯＢＯＬ言語で使用する場合は、ＡＮＳＩ ＣＯＢＯＬで提供されているＡＬＴＥＲＮＡＴＥ ＫＥＹ句の言語仕様に準じたオルタネートキーアクセス法を使用します。
通常のアクセス方法では主キー（プライマリキー）と副キー（オルタネートキー）を意識する必要はありませんが、オルタネートキーアクセスではキーに主従関係を設定したプログラムの作成が可能となります。
