今のオフィスコンピュータの定義?
先に説明したように、既に日本電子工業振興協会(現:電子情報技術産業協会)によるオフィスコンピュータの定義が無くなってしまったにもかかわらず、今でも事務用に使われるコンピュータのことをオフコンという人がいます。
この事実からもオフィスコンピュータ(オフコン)という言葉が、世間に広まっていることをよく表しています
この場合のオフィスコンピュータ(オフコン)は単に「会社の事務所に置いてあるコンピュータ」程度の意味で、これは広義のオフィスコンピュータ(オフコン)の定義に当るでしょう。
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現在のオフィスコンピュータ(オフコン)の狭義の定義として、メーカー独自アーキテクチャのHW/SWを採用した事務処理向けコンピュータを指す場合があります。
かつてメーカー独自アーキテクチャのオフィスコンピュータ(別の言い方をするならば、事務処理向けに特化した国産アーキテクチャのハードウェア、国産OSのコンピュータ)がたくさんありました。
当時オフィスコンピュータとされたコンピュータのうち、Windowsを搭載したものはWindowsサーバ、UNIXを搭載したものはUNIXサーバ、あるいはインテル社CPU(あるいはその互換CPU)を搭載したIAサーバ等分類可能なものがある一方、メーカー独自アーキテクチャ採用のコンピュータ達にはこれといった分類可能な名称がありません。
メーカー独自アーキテクチャの事務処理用コンピュータのうち、1990年代まで生き残っていたものは、
- NECのシステム7200シリーズ
- 富士通のKシリーズ
- 三菱電機のMELCOM80シリーズ
- 東芝のTP90シリーズ
- IBMのAS400シリーズ
これらは2000年代の今も生き残っており、それぞれ順に
- Express5800/600xiシリーズ
- Primergy6000シリーズ
- EntranceDSシリーズ
- TP90Fシリーズ
- iシリーズ
これらのいわば「その他」扱いのコンピュータ達に、世間では現在まとめてオフィスコンピュータ(オフコン)という名称を与えているようです。
上でメーカー独自アーキテクチャのHW/SWだと書きましたが、今ではそれほど”独自”ではありません。
まずハードウェアですが、富士通のPrimergy6000はIAサーバのPrimergy、三菱電機のEntranceDSは同じくFTシリーズ、NECのExpress5800/600xiはExpress5800/100のハードをそれぞれ(一部独自ハードを追加しているにしても)流用しています。
ソフトウェア面から言うと、富士通と三菱電機とIBMが搭載している独自アーキテクチャのOSはUNIX系です。そしてNECと三菱電機のものは、独自アーキテクチャOSと同時にWindowsも動きます。
メーカーの本心はもうオフィスコンピュータと呼んでほしくないようです。例えばIBM自身はiシリーズはオフコンではないと機会ある毎に言っています。
NECのExpress5800/600シリーズのカタログを見ると、「オフコン互換機能を備えたWindowsサーバ」として売り出しており、NEC自身も決してオフコンだとは言っていません。
なお、電子情報技術産業協会が毎年出しているミッドレンジコンピューターに関する報告書には、付録として各メーカーが出しているコンピュータがどの種類に分類しているのかの一覧が載っています。これは各メーカーがこのモデルはIAサーバ、これはUNIXサーバ・・・と自己申告したものをまとめたものです。この表を見ると富士通(Primergy6000)、三菱電機(Entrance)、東芝(TP90F)、IBM(iSeries)は独自OSサーバーに分類されていますが、なぜかNEC(Express5800/600)だけはIAサーバーとして分類されています。
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もう何度も書いていますが、ここらで一度話をまとめたいので、復習を兼ねて公式のオフィスコンピュータ(オフコン)の定義について、もう一度簡単に説明します。
日本電子工業振興協会(現:電子情報技術産業協会)が1970年代にオフィスコンピュータを定義し、1996年度にミニコンとオフコンを統合してミッドレンジコンピューターという分類にした(そしてオフィスコンピュータの定義を廃止した)ことを先に説明しました。
日本電子工業振興協会が1970年代〜1990年代にかけて定義していたオフィスコンピュータには、サーバの用途と規模で分けられており、OSの区別はありませんでした。
メーカー独自アーキテクチャのコンピュータもUNIXのコンピュータもWindowsのコンピュータも、事務処理向けのコンピュータは全部オフィスコンピュータと呼ばれていました。
1990年辺りから従来のコンピュータのシステム規模と用途別で分類するということが難しくなりました。このため日本電子工業振興協会では1996年度にオフィスコンピュータという分類を廃止し、ミッドレンジコンピューターという機種分類を新たに作りました。
そして現在一般的にオフコンと称されているNEC、富士通、三菱電機、東芝、IBMのコンピュータたちは皆ミッドレンジコンピューターと呼ばれるグループに属しています。そして2005年度の分類ではUNIXサーバもIAサーバ(PCサーバ)も皆ミッドレンジコンピュータに属しています。
結局のところ、かつてのオフィスコンピュータに分類されていたコンピュータ(独自アーキテクチャのコンピュータ、UNIXのコンピュータ、Windowsのコンピュータの事務処理向け)はそのままミッドレンジコンピューター(独自OSサーバー、IAサーバー、UNIX系サーバ)に分類されただけ、つまり名前がオフィスコンピュータからミッドレンジコンピューターに変わっただけなのです。
公式にはオフィスコンピュータとは1970年末〜1990年半ば頃に日本電子工業振興協会によって定義された事務処理向けのコンピュータを指します。(詳しい定義は別章を参照してください。)
そして現在ではオフィスコンピュータ(オフコン)というジャンル自体が無くなってしまったので、それぞれが(私も含めて)自分の都合の良いように勝手にオフィスコンピュータあるいはオフコンという言葉の定義を行い、それについて語っているに過ぎません。
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