日本電子工業振興協会(現:電子情報技術産業協会)によるオフィスコンピュータの定義
日本のコンピュータの発展を図るため、1974年に「特定電子工業及び特定電子工業振興臨時措置法」が制定され、その流れでコンピュータの再定義が必要となり、翌年の1975年に日本のコンピュータメーカーの組織である日本電子工業振興協会(略称は電子協:現在は電子情報技術産業協会(JEITA)と改称)がオフィスコンピュータの定義を発表しました。
この時にコンピュータを汎用コンピュータ、オフィスコンピュータ、ミニコンピュータ、ワークステーション、パーソナルコンピュータ、その他のコンピュータという6つのジャンルに分けて定義しています。
1975年のオフィスコンピュータの定義は以下のようになっています。
1975年:電子協によるオフコンの定義
|
この定義はオフコンの進化と共に何度も改定が行われ、20年後の1995年のオフィスコンピュータには下のような定義となっています。
1995年:電子協によるオフコンの定義
|
オフィスコンピュータの定義の変遷はこちらで解説するとして、ここでは省きます。
いろいろ難しく書かれていますが、結局のところ、パソコンより上、汎用コンピュータより下の中間のクラスの事務処理専用のコンピュータで、日本のような狭い事務所でも置けるようなもので普通のコンセントに挿せば使えるが、それなりに電力は食う、コンピュータに関する専門知識をあまり知らなくてもある程度は使える、そしてコンピュータ導入や保守にメーカー、ディーラー等のサポートがあるようなコンピュータ、というようなものだと言うことになるのだと思います。
さて、1975年と1995年のオフィスコンピュータの定義を紹介しましたが、それでは今の電子情報技術産業協会による定義はどうなっているのか、という人もいるでしょう。
結論から先に言うと、今はオフィスコンピュータの定義はありません。
実は、1996年に当時の電子協によりコンピュータの再々度の大幅な分類・定義の見直しが行われ、オフィスコンピュータというジャンルがなくなってしまったのです。
その代わりにオフィスコンピュータ、ミニコンピュータというジャンルを統合して「ミッドレンジコンピュータ」を定義しています。参考として下にミッドレンジコンピュータの定義の抜粋を記載します。
電子協の1996年のミッドレンジコンピュータの定義の抜粋
|
---------------
さて、1996年を持ってオフィスコンピュータ(オフコン)という名称は正式には消滅した訳ですが、この1996年前後はオフコンにとっていろいろな出来事があり、重要なターニングポイントになっています。
その1つとして、1996年頃からあの2000年問題が話題になりはじめています。
今更言うまでもないことですが2000年問題とは、(主にそれまでソフトウェアでは年を2桁で表現していたことから)古いコンピュータが2000年を越えると動かなくなるということでコンピュータ界だけでなく世間に広く影響を与えた問題です。
ちょうど1996年にオフコンの定義がなくなったことに注目して、
「オフィスコンピュータ(オフコン)」 イコール(=) 「1995年以前のコンピュータ」 イコール(=) 「古いコンピュータの総称」
というレッテルが貼られ、当時各メーカーが一番売り込みたかったオープンサーバとの比較対象として位置付けられました。
こうして1990年代後半に「オフコン vs オープンサーバ」として、さかんに宣伝されました。この場合のオフコンとは「1995年以前の事務向けのコンピュータ」程度の意味しか持ちません。
---------------
つまり1996年以降はオフィスコンピュータ(オフコン)は存在しないはずなのですが、NEC、富士通、三菱電機を始めとして各社自分の会社のコンピュータのうち、ある一連のシリーズのもの(NECの基幹業務サーバ、富士通のインターネットビジネスサーバ、三菱電機のソリューションサーバなど)をオフィスコンピュータあるいはオフコンと言っているようです。
特に上で説明したように2000年問題前後にオフィスコンピュータには「古いコンピュータ」なるレッテルが貼られており、販売上いろいろと不利な面があるのではないかと思われるにもかかわらずです。
(実は1996年以降の「オフィスコンピュータ」は、「(1995年以前の)オフコン vs オープンサーバ」という対決構図からはずれている訳ですが、一般の人々はそんなことは気にしないでしょう。)
このことを次に考えてみましょう。
戻る