Google
オフコン練習帳内を検索
インターネット全体を検索

NECオフコン関連
オフコン一般
情報
トップ  >  キヤノンのオフコン

キヤノンのオフコン


1.キヤノン・オフコンの誕生

キヤノンがオフィスコンピュータ事業に本格的に参入したのは1974年でした。
キヤノン初のオフコン・CANONAC500(キヤノナック500)は、メモリ1000語(8Kバイト相当)のBCDマシンで、入出力はタイプライタで行いました。プログラミングは機械語で行われ、命令数は42種類ありました。

CANONAC500と同時期にビリングマシンのCANONAC100も発売されています。


2.CANONAC350/750シリーズ

翌1975年には早くも新製品のバイトマシンのCANONAC750シリーズのモデル1、モデル2の2モデル、さらに1年後には後継機種のCANONAC750シリーズのモデル3、モデル4を発表、と立て続けにモデルチェンジを繰り返します。

これらCANONAC750シリーズは、3.2メガバイトの磁気ディスクをオプションで付けることもできますが、基本的にフロッピーディスクで運用する価格500万円以上の中級機クラスのオフコンです。
このため、1978年にさらに安価なCANONAC350シリーズを発表します。このCANONAC350はスーパービリングコンピュータという名称が付いている通り、ビリングマシンとオフコンの中間的形態のマシンでした。

CANONACシリーズは、(JISキーボードもありましたが)ワンタッチキーボードを備えているため、初心者にも使いやすいということが特徴でした。
CRTディスプレイの表示能力はCANONAC750モデル1/2が英数カナ表示で32字×8行の256文字、CANONAC350は20字×4行の80文字、CANONAC750モデル3/4になると64字×16行の1024字でした。これは当時としてはごく一般的な文字数です。

この頃キヤノンのオフコン用パッケージソフトとしてCOSMOS(Canon Original Standard Order System)が発表されています。これには販売管理、財務会計、給与計算や各種業種別アプリケーションが用意されていました。
また簡易言語COMETも用意されていました。


3.CANONAC51/71/91シリーズ

1979年から1981年にかけてCANONAC51/71/91のシリーズが発売されました。

CANONAC51はデスクトップタイプの小型オフコンで、キヤノンの得意とするワンタッチキーボードを備えていました。ワンタッチキーボードは1ブック2048項目で8ブック計16384項目を入力することが可能でした。CRTディスプレイは80文字×25行の2000文字を表示可能となっていました。

CANONAC71はキヤノンの主力モデルで、後に複数モデルが出てシリーズ化しています。
能力的にはCANONAC51をそのまま値段分だけ高性能にしたといった機種になります。
この当時、メーカー各社から漢字処理を行うオフコンが出始めた時期と重なったこともあり、CANONAC51/71発売も画面表示用に50種類程度の漢字文字を用意していました。

CANONAC91は、最大4台までのワークステーションを接続できる本格的マルチワーク、マルチジョブシステムでCANONACシリーズ最上位のディスクベースマシンです。ハードディスクにはキヤノン独自のIRプロセッサを採用していました。IRプロセッサとはハードディスク自身にデータを検索したり、並べ替えたりという機能を持たせたもので、本体のCPUの負荷を軽減し、高速に処理を行うことができるというものです。


1980年代前半はOA(オフィスオートメーション)という言葉が流行った時代で、日本語(漢字)処理やディスプレイのカラー化、グラフ表示機能、ワープロといった種々の機能が次々とオフコンに搭載されていきました。
キヤノンもこれらの機能を載せたオフコンを発表します。それがCANONAC71Kです。
1981年2月に満を持して発売したCANONAC71Kは、8481字種の漢字を画面に表示及び印刷が可能、棒グラフ表示、文書作成機能を持つというCANONACシリーズの集大成ともいえるモデルです。

ただし高価であるため、機能制限して安価にした限定漢字モデル(CANONAC71S)、さらに安価な従来の英数カナモデル(漢字が使えないモデル:CANONAC71)も用意されていました。
販売戦略上の理由から、さらに漢字プリンタの有無などオプションの差異で16モデルに分け、CANONAC71シリーズと称しました。

OSはCANONAC51シリーズがOS5、CANONAC71シリーズがOS7、CANONAC91シリーズがOS9と呼ばれるもので、開発言語はCOBOLではなく、主に簡易言語であるCOMETが使われました。この他にはアセンブラが用意されています。


4.SYSTEM10シリーズ

1981年末に、従来のCANONAC51/71/91各シリーズを統合したSYSTEM10が発売されました。

このSYSTEM10の特徴はコンポーネントタイプのオフィスコンピュータであるということです。これは既にCANONAC71シリーズで一部採用した概念をさらに発展したものです。

コンポーネントタイプとは、入力装置、出力装置、補助記憶装置がそれぞれ複数用意され、これらの中から組み合わせてシステムを構築するというものです。
このほかに当時はまだ日本語(漢字)処理が一般的ではなかったため、日本語(漢字)モデルと標準(英数カナ)モデルの2種類から選択するようにもなっていました。
SYSTEM10には、この頃のキヤノンのオフコンの特徴であるIRプロセッサも搭載していました。

ソフトウェア面では、従来互換を重視しながらも新しい機能を付け加えています。
OSは従来の3種類OSを統合したOS10と呼ばれるもので、2本の処理プログラムを同時並行稼動するマルチジョブ機能を持っているました。高機能なCOBOLが用意されたため、プログラム開発は簡易言語COMETの他にCOBOLでも行われるようになりました。この他にもアセンブラやフォーマットジェネレータといった言語も使用できました。
COSMOSという名称で統一されたアプリケーションパッケージが用意されていました。


このSYSTEM10を発売した後、キヤノンはパソコンに力を入れ、しばらくオフコンの新製品の発表がなくなります。
1982年にキヤノン独自仕様のパソコンAS-100、AS-300を発表、その後AS-300IIといった製品発表が続きます。一方製品販売を受け持つキヤノン販売は1983年に米国アップルコンピュータ社と業務提携を結び 販売総代理店として同社のパソコンの販売に乗り出しました。

当時のオフコンは技術革新の早い分野で、SYSTEM10発表から5年も経つとかなり旧式化してしまいます。かなり贔屓目にみてもSYSTEM10は発表当時でも他社のオフコンと比べてとりたてて特徴の無い凡庸なオフコンであり、1985年末頃に販売するにはかなり厳しかったのではないかと思われます。


5年の空白の後1986年にようやく発売されたFS-130は、従来のシリーズから外れたもので、パソコンAS-300を束ねるために作られたオフコンです。
マルチビリング、マルチデータエントリ、マルチワークといった能力を持ち、統合ソフトとしてスーパーキヤノブレインが使用できました。


5.SYSTEM3000シリーズ

もうオフコンには力を入れないのかと誰もが思っていたところ、突如1986年12月になって「来年1月に新しいオフコンシリーズであるSYSTEM3000シリーズを発売する」と発表しました。
約束通り1987年1月に発売されたSYSTEM3000シリーズはヒューレット・パッカード社(HP)と共同開発したオフコンで、当時の水準から見てもかなり高性能なものでした。

OSこそMPE(マルチ・プログラミング・エグゼクティブ)という名称でしたが、Ethernet準拠のLANやソケットなど数々のUNIXに近い機能を持っていました。 FS-130同様パソコンAS-300との接続も意識されており、MML機能の一種であるスーパーリンクでSYSTEM3000とAS-300間でのデータ連携を行うことができました。

その他ソフトウェア面でも、いち早くANSI85版COBOLを発表、簡易言語として第4世代言語Power House、データベースTurbo Imageの搭載というように当時一流のソフトを揃えていました。
さらに1988年には、当時オフコン分野で流行し始めていた「遠隔地からユーザーシステムの監視・保守する機能」に対応して、遠隔サポートシステム(RSS)を取り入れています。

HPのHP3000と互換性を持つSYSTEM3000になったことで、キヤノンのオフコンはワールドワイドなオフコンに生まれ変わりました。従来のCANONACシリーズは、キヤノン独自仕様であったため、どうしてもマイナーであり、全てのソフトをキヤノンと少数のソフトハウスが作りこまなくてはなりませんでした。世界中で使用されるHPのHP3000シリーズを採用したことで、世界中で使われている最新のソフトウェアやハードウェアが使えるようになったのです。

1992年に発売した(そしてキヤノンで最後のオフコンシリーズとなった)SYSTEM3000シリーズ900は、CPUに当時流行最先端のRISC CPUであるPA-RISCを採用しています。

なお当時、横河HP(現日本HP)でも同じハードウェアのオフコンを発売しています。
1987年に発売したSYSTEM3000モデル10とモデル20はそれぞれHPのHP3000 Micro3000とHP3000 Micro3000XEに相当、1988年に発売したSYSTEM3000GX、SYSTEM3000LXシリーズはHPが同年に発売した HP3000Micro3000ファミリ、1992年に発売したSYSTEM3000モデル910L/920L/930L/940LはそれぞれHP3000シリーズ917LX/927LX/937/947に対応します。


1990年代に入るとキヤノンは突然数々のパソコン事業に手を出し始めます。

まずキヤノン本体はAS-300に代わるパソコンの新しい自社ブランドNAVIシリーズ、DX-20シリーズを発表します。これはAS-300と同様自社オリジナルアーキテクチャのパソコンでした。
さらに1993年1月にDOS/V仕様パソコンのAXi/Vシリーズ、1989年にアップル社の創業者スティーブ・ジョブズ氏が設立したネクストコンピュータ社に出資、1993年10月にはOEM調達したNeXTSTEPパソコンを発売、1994年にはキヤノン販売がDOS/VパソコンのINNOVAシリーズ、1994年には米キヤノンでパワーPC生産といった具合に、次々に手を広げ始めます。

その結果、ネクスト関連事業への莫大な出資が命取りとなり、1996年7月キヤノンはパソコン、オフコンを含めコンピュータ事業から撤退することになってしまいます。


6.専用機

オフコンは「事務処理に特化したコンピュータ」ですが、オフコンにはさらに業務別や業種別に特化した専用機という分野があります。
専用機とは、ハードウェアとソフトウェアをとことんその業務や業種用にカスタマイズしたもので、それに不要な機能を削除することによって、汎用のオフコンより安価でかつ使いやすくしたものです。

キヤノンもこの専用機を開発しています。1970年代後半から1980年代にかけて、歯科医療機関向け事務処理専用オフコンのDAシリーズ、病院向け事務処理専用オフコンのMAシリーズの2つです。
ハードウェアはCANONAC51などを流用しており、DAシリーズではミック歯科との共同開発を行っています。


7.まとめ

日経コンピュータ調べによると、キヤノンのオフコンのシェアは1988年度は18位。他の資料でもほぼ同じ位置にあり、1970年代から18位前後で順位は変わっていないようです。
これはオフコン自体の性能によるものではなく販売力の差が主な原因でした。キヤノンのオフコンの販売はキヤノン販売による直販中心で、ディーラーは他のオフコンメーカーと比べると小規模ディーラーが主でその数も少ないためです。
1978年時点でキヤノンのオフコンディーラーは34社程度で、その販売力強化の為1979年にキヤノン100%出資のキヤノンシステム販売を設立するなどしたものの、最終的にはそれほど状況は変わらなかったようです。

CANONAC時代のキヤノンのオフコンのラインナップの範囲は、オフコンの普及機から中級機と呼ばれる範囲で、1000万円を超える高級機と呼ばれる価格帯のモデルはほとんどありませんでした。

SYSTEM3000時代のオフコンは、HPとの共同開発によって高級機の範囲までラインナップが広がり、かなり高性能になりました。

結局キヤノン単体ではリソースが限られてしまい、パソコンとオフコンの片方しか注力できず、他の有力オフコンメーカーと比べて販売力が劣っていたことが、キヤノンのオフコンがそれほど振るわなかった原因だと思います。







戻る
戻る


オフコン開発・製造はキヤノン本体が行っていたが、販売は当時のキヤノンの販売専門会社であるキヤノン販売(現:キヤノンマーケティングジャパン)が一括して行っていた。
他にオプションとして、紙テープリーダ(読み取り速度50字/秒)、補助パンチャ(鑽孔速度60字/秒)、カセットテープ装置、磁気ディスク装置(記憶容量6400語)などがある。キヤノンの特徴の1台の磁気ディスクに2台のCANONAC500を接続して、ディスク共用型のシステムが作れる機能がこの頃から既に用意されている。
”円”や”千”など簿記等によく使われる50文字程度が選ばれていた。
Information Retrieval Magnetic Diskと呼ばれた。
入力装置としてJISキーボードとワンタッチキーボードの2種類、CRTディスプレイとしてカラーとモノクロの2種類、、プリンタとして英数カナプリンタと漢字プリンタ、インサータ有無などの4種類、外部記憶装置として1メガバイトフロッピーディスク装置2台、フロッピーディスク装置1台と10メガバイトのハードディスク1台、フロッピーディスク装置1台と40メガバイトのハードディスク1台の3種類、を組み合わせた計48通りにさらにワープロ、音声出力等のオプションが9種類が用意されていた。
その他の特徴として、CANONAC500時代から連綿と受け継いでいる「1台のディスクを共有して、2つの基本システムを有機的に結合させることができる」機能も有している。日本語モデルはJIS第1、第2水準8836字を完全カバーし、6種類の漢字入力方式をサポート。
新しいパッケージソフトの発売やネットワーク機能の拡充(CANO NET等)、プリンタの新製品などソフトウェア面やオプション機器での発表は行われるが、基本ハードウェアとしての強化は無かった。
翌年販売代理店に。
キヤノン本体は自社開発のASシリーズに力を入れ、キヤノン販売はアップル社のパソコンを販売しようとしており、本社側と販売側で全くパソコン販売の方向が異なってしまっていた。オフコンSYSTEM10と組み合わせて販売する場合はASシリーズを付けるという差別化を図ったが、もともとキヤノンのオフコンはそれほどシェアも高くなかった為、ASシリーズは当初予定よりも売れなかった。
ワークステーションはAS-300で最大16台まで接続可能。基本的にAS-300をつなぐことを前提にしていろいろな機能が作りこまれている。
キヤノンは1985年にHPとコンピュータ分野での業務提携を行っている。
確認したわけではないが、おそらくUNIXベースのOSなのだと予想している。
ハードウェアは共通で、両社とも上に載るパッケージソフトなどのソフトウェアやプリンタなどの周辺装置で差別化を図っていた。