ＣＯＢＯＬの開発環境
- １ 昔あったいろいろな製品群
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かつてＡ−ＶＸのＣＯＢＯＬ用に、いろいろなオプション製品が発売されていました。
昔そのオプション製品の機能をＣＯＢＯＬに組み込んでみたものの、それがいつの間にか販売終了してしまっていたりします。そうすると、今になってＣＯＢＯＬのソースを見たりすると「これ何？」というようなことになったりします。
というわけで、過去発売されていたオプション製品の概要を説明したいと思います。私のところにメモや資料で残っている１９８０年代以降になります。私が個人的に調べたものなので、抜けはあります。
- 1.1 ＳＱＬプリコンパイラ
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ＣＯＢＯＬでＳＱＬ言語を使うため必要なオプション製品。埋め込みＳＱＬが使えます。
概要はＡ−ＶＸ／ＲＤＢのところで説明しています。
２００５年頃にこのサイトの「入門編」を書いたころは販売しているのを確認したのですが、最近調べてみたところＡ−ＶＸ０２で販売終了しているみたいです。
- 1.2 ＣＯＢＯＬグラフライブラリ ＧＲＡＰＨＬＩＢ
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ＣＯＢＯＬで、グラフを作成するためのサブルーチン群。円グラフ、棒グラフ、折れ線グラフ・・・などのグラフが作成できます。
サブルーチン名は以下。
ファイル名 適用機種 SYSGRCIR 円グラフ SYSGRBR1 単純棒グラフ SYSGRBR2 要素棒グラフ SYSGRBR3 比較棒グラフ SYSGRBR4 高低棒グラフ SYSGRLIN 折れ線グラフ SYSGRLYR 要素折れ線グラフ SYSGRRAD レーダーチャート SYSGRBLT 帯グラフ 1120×780ドットのグラフィック表示ができる昔のオフコン専用の端末（システム３１００／Ｘシリーズ、システム７１００シリーズなど）とかで使用できます。パソコンのＰＣ／ＷＳエミュレータでは使用できません。
オフコン専用の端末が壊れていなければ、その端末上で今でも使えます。
- 1.3 ＣＤ−ＲＯＭ支援パッケージ
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システム３１００、システム７２００用のＣＤ−ＲＯＭ装置をＣＯＢＯＬ言語で制御して、大容量データの読み込みが可能。
ＣＤ−ＲＯＭ用のシステムサブルーチンが提供されて、そのシステムサブルーチンを介してＣＤ−ＲＯＭ装置を制御します。
ＣＤ−ＲＯＭ装置上のファイルのオープン／クローズ、ファイルのデータの読み出し、オープンしたファイルの情報取得、フィジカル制御によるボリュームの相対セクタ番号でのデータ読み出し、など。
システム３１００、システム７２００時代のもので、Ｅｘｐｒｅｓｓ５８００／６００シリーズでは使用できないようです。
Ｅｘｐｒｅｓｓ５８００／６００シリーズでは使えないので、２０００年以前に販売終了しています。
- 1.4 光ディスク支援パッケージ
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システム３１００、システム７２００用の光ディスク装置（５インチのＭＯカートリッジを使う装置）をＣＯＢＯＬ言語で制御して、大容量データの読み込み／書き込みが可能。
光ディスク装置用のシステムサブルーチン（光ディスクアクセスサブルーチン）が提供されて、そのシステムサブルーチンを介して光ディスク装置を制御します。
光ディスクユニット／ファイルのオープン／クローズ、光ディスク媒体内のファイルのＲＥＡＤ／ＷＲＩＴＥ，ＳＴＡＲＴ、ファイルの削除、ヘッダ情報読み取り、など。
システム３１００、システム７２００時代のもので、Ｅｘｐｒｅｓｓ５８００／６００シリーズでは使用できないようです。
Ｅｘｐｒｅｓｓ５８００／６００シリーズでは使えないので、２０００年以前に販売終了しています。
- 1.5 ＯＳＶ−ＧＵＩ
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Ｗｉｎｄｏｗｓのダイアログボックスに各種コントロール貼り付けたウインドウをオフコンの端末にするための製品。
オフコンのイメージは黒い画面に文字だけの表示というイメージですが、これを使うとＷｉｎｄｏｗｓのリストで選択したりボタンをクリックしたりして業務を行うことができました。
機能はバージョンが上がるごとに徐々に増えていきましたが、最終的には次のような機能があったようです。
- ＣＯＢＯＬ−ＧＵＩ
- ＣＯＢＯＬ−ＤＤＥ
- ＳＭＡＲＴ�僑釘悄檻韮妝�
ＣＯＢＯＬ−ＧＵＩは、オフコンのＣＯＢＯＬアプリケーションからＷｉｎｄｏｗｓのＧＵＩを使う機能です。
マイクロソフトのＶｉｓｕａｌ ＢＡＳＩＣで画面を作成して、端末側に配置します。プログラムはＣＯＢＯＬで作ります。データの受け取りなどは専用のサブルーチンＣＡＬＬで受けとるように作ります。ＣＯＢＯＬアプリケーションはオフコンに入れます。
端末のＰＣ／ＷＳエミュレータからオフコンのＣＯＢＯＬアプリケーションを起動すると、ＣＯＢＯＬアプリケーションから端末側のＧＵＩのウインドウを表示して操作する、という仕組みです。ＣＯＢＯＬアプリケーションは最小限の修正でＧＵＩ化できるというのが売りでした。
ＣＯＢＯＬ−ＤＤＥ機能は、オフコン側のＣＯＢＯＬアプリケーションとＰＣ側ソフトウェアをＤＤＥ機能を利用することで、ＣＯＢＯＬアプリケーションからＰＣ側ソフトウェアを起動したり、ＣＯＢＯＬアプリケーションとＰＣ側ソフトウェアでデータ送受信を行うための機能です。
Ｖｉｓｕａｌ Ｂａｓｉｃで作ったソフトウェアやＥｘｃｅｌやＷｏｒｄなど、当時ＤＤＥ機能を使用できるようなパソコンソフトとデータ送受信などができました。ＳＭＡＲＴ�僑釘悄檻韮妝謬’修蓮▲�フコンのＳＭＡＲＴ�僑釘悗悩遒辰織▲廛螢院璽轡腑鵑�らＷｉｎｄｏｗｓのＧＵＩを使う機能です。
ＣＯＢＯＬ−ＧＵＩと同様に、Ｖｉｓｕａｌ ＢＡＳＩＣで画面を作成して、ＣＯＢＯＬアプリケーションから端末側のＧＵＩのウインドウを表示して操作する、という仕組みです。
このＯＳＶ−ＧＵＩを使用するには、「ＰＣ／ＷＳエミュレータ（ＷＩＮＤＯＷＳ用）」が必要でした。ＰＣ／ＷＳエミュレータ（ＷＩＮＤＯＷＳ用）に「ＧＵＩウインドウ」機能というものが搭載されていました。このＰＣ／ＷＳエミュレータはＷｉｎｄｏｗｓ３．１時代のもので、１６ビットアプリケーションです。（一応、Ｗｉｎｄｏｗｓ９８やＷｉｎｄｏｗｓＸＰでも動きます。）
一方、３２ビット版のＷｉｎｄｏｗｓ用に作られたのが「ＰＣ／ＷＳエミュレータ（３２）」です。こちらには「ＧＵＩウインドウ」機能は搭載されていません。そのため、ＯＳＶ−ＧＵＩ機能を使うには１６ビット版の古いＰＣ／ＷＳエミュレータを使うしかありませんでした。
ＣＯＢＯＬ−ＧＵＩ機能で画面設計を行うには、以下のいずれかのソフトが必要でした。
- ＭｉｃｒｏｓｏｆｔＶｉｓｕａｌ ＢＡＳＩＣ Ｖｅｒ２．０またはＶｅｒ４．０
- Ｍｉｃｒｏｓｏｆｔ Ｗｉｎｄｏｗｓ３．１ ソフトウェア開発支援キット
- Ｍｉｃｒｏｓｏｆｔ Ｃ／Ｃ＋＋（Ｖｅｒ７．０Ａ）
ＶＢ Ｖｅｒ５．０以降は未対応になっており、実際に使えませんでした。
つまり実質２０００年ごろには使えないものでした。 - 1.6 ＣＯＢＯＬ／Ｓ
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私の持っている当時のチラシには下のように書いてあります。
ＣＯＢＯＬ言語にいくつかのキーワードを追加して、ＣＯＢＯＬ言語では表現しにくいプログラムの論理構造を明確化し、保守しやすいプログラムを作成する目的を持つものが、ＣＯＢＯＬ／Ｓ言語である。
またＣＯＢＯＬ／Ｓ言語で記述されたソースプログラム（含むマクロ）を図および表として編集し、ドキュメントを作成する機能を持つ。
ＣＯＢＯＬ／Ｓの”Ｓ”は、次のような意味を持っている。
−構造的（Structured）
−標準的（Standardized）
−疑似的（pSeude）
私はオフコン用のＣＯＢＯＬ／Ｓは見たことはありませんが、おそらくＮＥＣのメインフレーム：ＡＣＯＳシリーズのＣＯＢＯＬ／Ｓと同じなのではないかと思います。
ＣＯＢＯＬのプリコンパイラです。ＣＯＢＯＬ／Ｓ用のソースを書いた後に、これでＣＯＢＯＬのソースにしてから、ＣＯＢＯＬまたはＣＯＢＯＬ８５でコンパイルします。
当時のチラシの内容を見ると、ＣＯＢＯＬ７４相当のようです。（ＣＯＢＯＬ８５のＣＯＢＯＬ７４モードでコンパイルすると書いてある。）
Ｅｘｐｒｅｓｓ５８００／６００シリーズの頃はオフコン用のＣＯＢＯＬ／Ｓは売っていなかったので、たぶん２０００年以前に販売終了になったのだと思います。
ＡＣＯＳのＣＯＢＯＬ／Ｓと同じだとしたら、ソース中に「ID:」とか「ED:」とか「DD:」といったキーワードが入っているはずです。
- 1.7 Ａ−ＶＸ�掘。達錬贈錬味牽機複唯稗丕嗟僉乏�発環境
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あまり詳細は分かりませんが、ＣＯＢＯＬプログラムで高速型ＬＭを作るコンパイラのようです。
通常のコンパイラで作ったロードモジュールの数倍の処理速度のだったようです。
Ａ−ＶＸ３専用です。作ったロードモジュールもＡ−ＶＸ３だけで使用できるようです。それ以前のＡ−ＶＸ２、Ａ−ＶＸ１０などでは動作せず、それ以降のＡ−ＶＸ４、Ａ−ＶＸ０１、Ａ−ＶＸ０２ではエラーとなり動かないようです。Ａ−ＶＸ３専用にカスタマイズしているのでしょうか。
Ａ−ＶＸ３専用なので、Ａ−ＶＸ４の時に発売終了になっているようです。
- ２ 昔あった統合開発環境
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かつてはオフコンにも統合開発環境というものがありました。使っている人がいたのかどうかはわかりませんが。。。
ＳＥＡ／Ｉとその後継製品のＣＡＳＥＷＯＲＬＤです。
- 2.1 ソフトウェア開発環境 ＳＥＡ／Ｉ
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分散開発型のソフトウェア開発環境と開発方法論を提供する統合開発環境でした。１９８０年代後半から１９９０年ぐらいにかけてあった製品です。オフコンの名前で言うとシステム３１００／Ａシリーズの頃です。
以下はほとんどカタログの内容を私なりに解釈したものです。かなり大規模なシステムのようです。
ソフトウェア開発支援システム「ＳＯＦＰＩＡ」、ＣＯＢＯＬ８５コンパイラ、高生産性言語システム「ＩＤＬ�供廖�第四世代言語「ＳＭＡＲＴ�僑釘悄廖�開発方法論とソフトウェア生産効率化ツール「ＡＤＶＩＣＥ」で構成されているようです。
「ＳＯＦＰＩＡ」には、開発作業に先立って、ユーザとシステム作成者が理解・合意を確立する為のプロトタイピング作業を支援する「プロトタイピングツール」や設計ツールの「システム構造設計ツール」、「プログラム構造設計ツール」、「フォーム設計ツール」などがあったようです。
で、それらの設計ツールでプログラムの設計をしたら、「ＣＯＢＯＬシンセサイザ」「ＣＯＢＯＬデータ部生成ツール」「テスト支援ツール」「運用環境自動設定ツール」などで、ＣＯＢＯＬプログラムを自動生成したり、テストデータやテストプログラムを自動生成したり、インストーラーを自動生成したり、メニューやＪＳを自動生成したりできるようです。
設計ツールの情報から「ドキュメント生成ツール」で仕様書を自動生成できるようです。
大きな特徴は、開発者はプログラムを作るのではなく、仕様を設計します。仕様を作って、そこからプログラムを自動生成する形になります。例えばテストしてバグがあったときも、プログラムを修正するのではなく、仕様を修正してプログラムを自動生成する形になります。
開発作業は、分散型開発環境「ＰＷＢ」を使います。開発作業は各クライアントで分散開発し、作成した仕様はオフコン上で集中管理します。バージョン管理もある程度あります。オフコンで管理するもの（ハードディスクに格納したりバージョン管理したりするもの）は仕様です。プログラムは管理しません。プログラムは仕様から生成するものです。
このようにＳＥＡ／Ｉ上で開発者は一切プログラミングしません。仕様を設計します。
ソフトウェア生産効率化ツール「ＡＤＶＩＣＥ」は、アプリケーションソフトウェア開発における生産性向上を目指す方法論であり、設計法、作業分担、作業標準、プログラム標準化の４要素で構成されています。
「ＳＭＡＲＴ�僑釘悄廚蓮△海海鮓�ている人にはおなじみのオフコンでよく使われる簡易言語ですね。対話型質問形式によるプログラム開発、プログラミングの知識のない人でも簡単にプログラム作成できるのが特徴の言語です。
「ＩＤＬ�供廚蓮■裡釘辰離瓮ぅ鵐侫譟璽爐任茲�使用されている言語ですね。事務処理パターンをアクションとして言語化し、データ中心型のアプローチで開発するのが特徴の言語です。カタログの内容を見る限り、画面回りの命令が少し異なるようですが、他はほとんど同じようです。ＩＤＬ�兇旅柔�は、テキストエディタ、ＭＦＤコンパイラ、ＩＤＬ�競灰鵐僖ぅ蕁■達錬贈錬味牽汽灰鵐僖ぅ蕕里茲Δ任后�
いろいろなオプション製品が出ており、ＳＥＡ／Ｉ用 標準部品ライブラリ（プログラム部品集）、ＡＤＶＩＣＥパターンモジュールＳＥＡ／Ｉマクロ編（ＡＤＶＩＣＥの方法論に従ったプログラムのひな型集）、ＳＥＡ／Ｉアプリケーションライブラリ（ＮＥＣが実際に販売している業務アプリケーションのソースが入っていて、それをカスタマイズして使用できた）などがあったようです。
なおＳＥＡ／Ｉですが、シーワンと読むようです。
- 2.2 ＣＡＳＥＷＯＲＬＤ
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ＳＥＡ／Ｉを整理し発展・統合した統合開発環境らしいです。「ＳＥＡ／Ｉ」「ＳＯＦＰＩＡ」「ＡＤＶＩＣＥ」「ＰＷＢ」といったものが「ＣＡＳＥＷＯＲＬＤ」という名称で統一されたもののようです。
オフコン用のＣＡＳＥＷＯＲＬＤは、１９９０年代前半、オフコンの名前で言うとシステム７２００辺りの製品です。Ｅｘｐｒｅｓｓ５８００／７００シリーズ以降は販売終了しています。売っていたのは非常に短い期間です。
ＮＥＣのメインフレームのＡＣＯＳにもＣＡＳＥＷＯＲＬＤはあります。こちらの方は２０２０年になる今でも普通に使われています。私はオフコン用のＣＡＳＥＷＯＲＬＤは使ったことはありませんが、こっちのメインフレーム用のＣＡＳＥＷＯＲＬＤはそこそこ使ったことがあります。
そういうわけで、オフコン用のＣＡＳＥＷＯＲＬＤをカタログやチラシを元に概要を説明してみます。
ＳＥＡ／Ｉを発展したものなので、基本的にはできることは同じ。
開発環境はオフコンをサーバ、ＥＷＳというＮＥＣのＵＮＩＸワークステーションがクライアントの分散開発環境。仕様を設計して、その仕様を元にＣＯＢＯＬプログラムやＩＤＬ�競廛蹈哀薀爐覆匹鮗�動生成。
システム分析、システム概要設計、システム詳細設計、製造、テスト、運用・保守の各工程の作業は開発作業メニューから選択してすすめる。作成した仕様はＳＥＡ／Ｉリポジトリで一元管理し、次の作業へシームレスに情報を継承する。
仕様からプログラムやオブジェクトを自動生成するのでプログラムレスな開発。テストデータなども自動生成し、テストを自動的に実行。既存のソフトウェアも取り込むリエンジニアリングツールもある。
設計情報はＳＥＡ／Ｉリポジトリに入っており、設計書などは電子化されているためペーパーレス。
ＳＯＦＰＩＡおよびＳＭＡＲＴ�僑釘悗了斗佑鯏樵�することでＣＡＳＥＷＯＲＬＤの資産として利用することが可能。ＥＷＳ／ＷＳエミュレータを使って端末上でテスト・実行が可能。仕様はメインフレームＡＣＯＳシリーズやパソコンＮ５２００などと共通のため、オフコン上で仕様を作成すれば、メインフレームやパソコンに転送することにより、それらで動くプログラムを生成することができる。つまり１つ仕様を作成すれば、オフコン、メインフレーム、パソコン、それぞれで実行できる業務プログラムを作ることができる。
ここまで、チラシに書いてあったセールストークをまとめてみました。
この頃はＵＮＩＸワークステーション全盛期でしたがその後下火になったので、クライアントがパソコンならばもうちょっと続けられたのかも。
私の知っているのはメインフレーム用のＣＡＳＥＷＯＲＬＤなので、オフコン用は違うのかもしれませんが、上に書いたセールストークは誇大広告的な感じですね。自動的にプログラムを作るまでにかなり細かく仕様を書かなければならず、それなら直接プログラミングした方が早いかもという感じです。仕様さえしっかり作り込めば、どのようなプログラムも自動生成することができます。仕様はサーバで一元管理されるので、どれが最新？みたいなバージョン間違いのようなことは起こりにくいです。
- 2.3 ＳＥＡ／Ｉ用 標準部品ライブラリ（ＳＯＦＰＩＡ用 標準部品ライブラリ）
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プログラム部品をＣＯＢＯＬソースで提供したものです。
日数計算、西暦和暦変換、平均値、割合計算、平方根計算、標準偏差算出、最大・最小値算出など４６種ありました。ＳＥＡ／ＩやＣＡＳＥＷＯＲＬＤが販売終了となった後もプログラム部品として製品単体でしばらくの間売られていたようです。
- 2.4 ＡＤＶＩＣＥパターンモジュールＳＥＡ／Ｉマクロ編
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プログラムの基本スケルトン（ひな形）をライブラリとして提供。方法論をドキュメントとして提供。
もともとはＳＥＡ／ＩおよびＳＯＦＰＩＡを早期に活用できるように提供していたようです。ＳＥＡ／ＩやＣＡＳＥＷＯＲＬＤが販売終了となった後もプログラムのひな型集として製品単体でしばらくの間売られていたようです。
